ヤギは紙を食べる動物としても知られている。与えられれば割と積極的に食べる場合が多い。しかし、現実には、現代の紙を食べさせると消化できず、腸閉塞などを起こす可能性があり、危険である。昔は紙の多くが植物のみでできていたので、ヤギが食べる(消化する)ことができた。このため、大事な書類や手紙などをヤギに食べられてしまうというエピソードが、童話や童謡などに登場する。紙の主成分は、植物のフレーム部分の基本成分であるセルロースという繊維質である。セルロースを分解するのは、セルラーゼという分解酵素であり、この酵素はセルロースをオリゴ糖に分解する。セルラーゼを自前で分泌できる高等生物は存在しないが、草食哺乳類は、セルラーゼを分泌する共生微生物を胃腸内にもつことで、これを栄養源として利用することを可能にしている。他のすべての反芻動物と同様、ヤギの場合も、複数ある胃のうちの第一胃(ルーメン)に、このような微生物が蓄えられており、ここでセルロースの分解が行われる。つまり、原則としては、ヤギは紙を摂取して消化し、エネルギーを獲得することができるということになる(なお、ヒツジなどヤギ以外の草食動物は、紙を与えられても、嗜好として通常はほとんど食べることはないが、ヤギと同様にセルロースを消化する能力はある)。 |